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麻生 智一
日本機械学会誌, 107(1029), P. 43, 2004/08
2003年の日本の原子力発電の動向,軽水炉に関する安全性研究及び新型炉の開発状況について解説した。原子力発電は2003年12月末現在で改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を含む沸騰水型軽水炉(BWR)が29基、加圧水型軽水炉(PWR)が23基の合計52基が稼働中である。新規着工として北海道電力泊3号機(PWR)の建設が認可され、東北電力東通1号機(BWR),中部電力浜岡5号機(ABWR),北陸電力志賀2号機(ABWR)と合わせて4基が現在建設中である。東京電力の全原子力発電ユニットが一連の不祥事を受けた点検や定検のために停止し、その他発電所の定検等を合わせた影響で、2003年の年平均設備利用率は57.5%と大きく低下した。軽水炉に関する安全性研究は原子力安全委員会が策定した原子力安全研究年次計画に従い着実に進められた。高温工学試験研究炉(HTTR)では、炉心冷却材(ヘリウムガス)の流量低下に伴って原子炉出力が低下する高温ガス炉固有の安全性が実験的に確認された。また、国際熱核融合実験炉(ITER)計画では、米国,中国,韓国が同計画への参加を表明し、政府間協議でサイトの建設予定地が六ヶ所村(日本)とカダラッシュ(フランス)の2つに絞られた。
井口 正; 岩城 智香子*; 安濃田 良成
JAERI-Research 2001-060, 91 Pages, 2002/02
従来のポストCHF試験に比べて、2MPa~18MPaの広い圧力範囲,33kg/ms~1651kg/msの広い流量範囲,過熱度500Kまでの広いヒータ温度範囲で、定常ポストCHF試験を行い、沸騰遷移領域,限界熱流束,ポストCHF熱伝達率に関するデータを得た。試験体は、BWR燃料と同径・同長のヒータによる44管群流路とした。試験の結果、沸騰遷移は複数のグリッドスペーサの直下で生成し、加熱量の増加とともに、沸騰遷移領域は下方に伸長することがわかった。グリッドスペーサー上方は核沸騰状態であるのに対し、グリッドスペーサ下方は膜沸騰状態になる。したがって、限界熱流速は、グリッドスペーサからの距離に影響される。グリッドスペーサ直上の限界熱流束は、同じ局所条件で比べるとグリッドスペーサ直下の限界熱流束の約1.15倍であった。ポストCHF熱伝達は、伝熱体の加熱度が十分大きければ、蒸気乱流熱伝達が支配的であり、単相流の熱伝達相関式が適用できる。加熱度が十分には大きくない場合、ポストCHF熱伝達率は、単相流の熱伝達相関式による予測値よりも大きくなる。ポストCHF熱伝達率を単相流の熱伝達相関式による予測値で規格化することにより、質量流束の影響を表現できる。ただし、圧力,過熱度,位置の影響を表現できない。試験結果によれば、ポストCHF熱伝達率に及ぼす圧力,過熱度,位置の影響は、ヒータ温度及び位置の関数で表現できた。ポストCHF熱伝達率は、グリッドスペーサ直下で最小であり、グリッドスペーサから上流に離れる程増加する。グリッドスペーサ1スパン区間で、ポストCHF熱伝達率は約30%増加した。
羽賀 勝洋
日本機械学会誌, 104(993), P. 533, 2001/08
2000年の日本の原子力発電の動向、軽水炉に関する安全性研究及び新型炉の開発状況について解説した。原子力発電は2000年12月末現在で、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)を含む沸騰水型軽水炉(BWR)が28基、加圧水型軽水炉(PWR)が23基、新型転換炉(ATR)が1基の合計52基が稼働中である。また、東北電力女川3号機(BWR)、東北電力東通1号機(BWR)、中部電力浜岡5号機(ABWR)、北陸電力志賀2号機(ABWR)の4基が現在建設中である。2000年は、設備利用率が80.6%と昨年とほぼ同じ水準であった。軽水炉に関する安全性研究は原研において、事故時の核分裂生成物(FP)の放出挙動に関する研究、燃料の高燃焼度化とMOX燃料の利用に対応するための研究等が実施された。高温工学試験研究炉(HTTR)は、1998年11月の初臨界後、2回目の出力上昇試験を2000年4月から開始し30%出力を順調に達成した。また、国際熱核融合実験炉(ITER)計画では、原研の「JT-60」用電源を用いて行われたITER用超伝導パルスコイル実験において、磁場の持つ蓄積エネルギーで世界記録の20倍を達成し、ITER建設に必要なコイル性能の目標値を達成した。
神永 雅紀
日本機械学会誌, 103(981), p.42 - 43, 2000/08
1998年の日本の原子力発電の動向、軽水炉に関する安全性研究及び新型炉の開発状況について解説した。原子力発電は1999年12月末現在で、BWRが28基、PWRが23基とATRが1基あり、合計52基が稼働中である。3月には、中部電力浜岡5号機(ABWR)の建設が、8月には北陸電力志賀2号機(ABWR)の建設がそれぞれ着工された。1999年の設備利用率は80.6%であった。軽水炉に関する安全性研究は原研においてLSTFを用いた次世代型PWRの重力注入式ECCSに関する実証試験、VEGAによる超ウラン元素の放出挙動に関する研究等が実施された。高温工学試験研究炉(HTTR)は、1999年9月から出力上昇試験が開始された。臨界プラズマ試験装置(JT-60)を用いてITERの定常運転法の開発が進められ、「負磁気シアプラズマ方式」によりプラズマ電流を連続的に流す運転法が世界で初めて実証された。
平野 靖*; 笹川 勝*; 佐伯 潤*; 八木 誠*
JNC TJ9440 2000-007, 43 Pages, 2000/03
軽水炉プルサーマル利用技術をはじめ軽水炉技術の将来動向を的確に把握し、FBR導入戦略の検討評価に適切に反映してゆく目的で、大間原子力発電所を含めABWRならびに将来導入が期待される高燃焼度BWRに関する国内外の研究開発動向を調査し、炉心特性(酸化物ウラン燃料装荷炉心、1/3MOX燃料装荷炉心、フルMOX燃料装荷炉心)、プラント特性、経済性、技術的課題、実用化見通し時期等を整理した。ABWRのMOX燃料とウラン燃料に関して、現行燃焼度燃料条件(取出45,000MWd/t)、及び高燃焼燃料条件(取出60,000MWd/t)で、公開コードであるSRACを用いて炉心特性データを解析評価した。これら、調査結果は炉型シナリオ評価に反映される計画である。主な成果は下記の通りである。(1)大間原子力発電所を含めABWRならびに高燃焼度BWRに関する国内外の研究開発動向について公開文献等の記載事項を調査・整理した。(2)ABWRのMOX燃料とウラン燃料に関して、取出燃焼度45,000MWd/t、及び60,000MWd/tの条件で、取出燃料の燃料組成データを評価し燃料サイクルシナリオ検討用データとしてまとめた。
飛岡 利明
エネルギーレビュー, 1989(9), p.13 - 17, 1989/09
原子力施設に限ることなく、大型施設はリスク・フリーではない。その技術を導入するに先立ち、事前の安全評価を行う必要がそこにある。この安全評価については、古くから許認可に使われて来た決定論的手法を補完するものとして、確率論的安全評価手法が多用され始めた。この手法の歴史、特徴ならびに手法概要を簡単に解説する。そして、例を原子力発電所にとって、1975年に公刊された米国100基の稼動炉がもたらすリスクを評価したラスムッセン報告、それ以降約30に及ぶリスク評価例、特に最近まとめられたNUREG-1150の成果を紹介する。我が国におけるリスク評価の適用例もいくつか触れた。